【サウナコラム】水風呂のルーツを探る!「テルマエ展」で発見した古代の知恵

【サウナコラム】水風呂のルーツを探る!「テルマエ展」で発見した古代の知恵

2024年9月9日

kokolo sauna認定サウナライターの山﨑です。

先日、神戸市立博物館で2024年6月22日(土)から8月25日(日)まで開催されていた「テルマエ展」を、最終日に滑り込みで訪れてきました。

ヤマザキマリさんの漫画『テルマエ・ロマエ』で耳にした方も多いかもしれませんが、「テルマエ」とは、ギリシャ語の「テルモス(熱い)」に由来し、狭義には古代ローマ時代(紀元前8世紀から西ローマ帝国の滅亡までの約1200年間)の皇帝たちによって造られた大規模公共浴場を指す言葉だそうです。

そんな今回の「テルマエ展」では、古代ローマの公共浴場であったテルマエが、現代のサウナや水風呂の文化に対し、どのように受け継がれてきたのかを探る貴重な機会となりました。

「テルマエ」が生まれた背景とその後

展覧会の第1会場では、「テルマエ」が誕生した社会背景についての展示がありました。

当時のローマでは、特権階級と庶民の間に大きな格差があり、庶民の家庭には台所や浴場がなく、時には水道さえも整備されていませんでした。

そこで皇帝たちは食糧の配給や剣闘士の試合、劇場での娯楽と並んで、公衆浴場である「テルマエ」を建設することで人々の生活を少しでも豊かにしようとしました。

初代皇帝アウグストゥスの右腕のアグリッパによって紀元前25年に建設されて以降、ネロ帝(60-64年)、ティトゥス帝(80年)、トラヤヌス帝(109年)らによって大規模なテルマエが建設され、4世紀のローマ市内には大規模な公共浴場が11軒、小規模なものまで含めると900軒前後もあったと言われています。

※日本の銭湯の数は1968年に1万7999軒をピークに減少しています。

また、公衆浴場である「テルマエ」の床には水に強いモザイクタイルが敷かれ、浴場には皇帝の肖像が彫刻されるなど、美術品を間近で楽しめる場でもあり、水道をはじめとする高い建築・土木技術に支えられていた事が伺えます。

しかし大規模なテルマエ運営には水道の管理、維持に加え、大量の燃料と奴隷を必要としたため、古代ローマの風呂文化は、中世には消え去ってしまったそうです。

「テルマエ」の温浴・冷浴文化

古代ローマの公衆浴場「テルマエ」のルーツは、古代ギリシャの運動施設「ギュムナシオン」にもあると言われています。

ギリシャでは、運動後に身体をリフレッシュさせるために冷水浴が行われており、その施設内には冷水浴用のプールや浴場が設置されていました。こうした冷水浴の文化が、後に古代ローマに伝わり、「テルマエ」の一部として取り入れられたと考えられています。

そのため「テルマエ」では、複数の浴室を巡り、冷浴から始まり、次に温浴、最後に熱浴という循環浴が行われていました。このプロセスは、単なる入浴にとどまらず、リフレッシュやリラクゼーションの場として機能していたのです。運動後に冷水浴で身体を引き締め、その後温浴でリラックスし、熱浴で汗を流すという一連の流れは、現代のサウナの温冷交代浴と非常に似ていますよね。

現代における水風呂の魅力

展覧会の第2、第3会場では、古代ローマ人が浴場に持ち込んで使っていた道具や、日本の入浴文化との比較などが紹介されていました。

たとえば、古代ギリシャでは肌に油を塗り全裸で運動した後、ストリギリス(肌かき器)で汚れを落とし、水で身体を洗っていました。展示されていた石鹸容器などは、現代の銭湯でも見られるアイテムとしても通用するもので興味深かったです。

また冷水浴の歴史は、現代のサウナ文化にも大きな影響を与えています。サウナでしっかりと体を温めた後、水風呂に入ることで得られる爽快感は、多くのサウナ愛好者にとって欠かせないものとなっています。水風呂は、血管を収縮させ、新陳代謝を促進するだけでなく、心身のリフレッシュやリラクゼーション効果も高いのが特徴です。

特に冷水の刺激が自律神経を整え、日々のストレスを和らげる効果があると言われており、心地よい「整う」感覚を体験できるのが魅力です。この感覚を一度味わうと、その虜になる人が多いのも納得です。

私自身もサウナに入ると、水風呂は欠かせない存在です。体温が落ち着き、心も整ったときの爽快感は、言葉では表現しきれないほどのものです。

もしまだ水風呂を体験したことがない方がいれば、サウナでの「整う」体験を通じて、古代ローマの人々が味わった心地よさをぜひ体感してみてくださいね!

テルマエ展 番外編

さて、テルマエ展をすべて見終え、館内をふらふらと散策していると「神戸の歴史展示室」という常設展示が目に入りました。せっかくだし、サウナや水風呂に関連する何かがないかと期待しつつ見て回ることに。すると、思いがけない発見がありました。

神戸は1868年1月1日(慶応3年12月7日)に開港しましたが、港に立ち寄る外国船にとって大切な目的の1つが水の補給でした。神戸市水道局では1905年から船舶への給水事業を開始し、その際に提供されたのが、赤道を越えても腐らないと評判になった「Kobe Water」だったそうです。

長い航海を続けるため、腐らない水の確保が重要だった当時、なぜ「Kobe Water」は腐らなかったのか?

その答えは、採水地である布引渓流の自然環境にありました。布引渓流は急峻な地形を水が流れるため、有機物が少なく、微生物が繁殖しにくいのです。さらに、急流でミネラルの含有量も少ないため、まろやかで飲みやすい軟水が誕生しました。

この話を聞いたとき、すぐに思い浮かんだのが、kokolo saunaで取り扱っているチラー付き水風呂の「Hagoromo1」です。

至極の「ととのい」へと導くシングルを実現したチラー水風呂

実はHagoromo1のチラーには最新鋭のオゾン除菌・ろ過機能が備わっており、水中の不純物を除去し、清潔さを保つだけでなく、水質をまろやかにしてくれるのです。

これって、まさに「Kobe Water」と同じやん!と、妙にテンションが上がってしまいました(笑)。

「Kobe Water」が船乗りたちに愛されたように、「Hagoromo1」のチラーも現代のサウナーたちから「サウナ風呂の名水」として愛してもらえる様、我々も頑張らないといけない!と決意したのでした。

まとめ

今回、神戸市立博物館で開催された「テルマエ展」を訪れ、古代ローマの公衆浴場「テルマエ」と現代のサウナ文化との深い繋がりを感じ取ることができました。

展覧会を通じて、テルマエが身体の清潔を保つだけでなく、心身のリフレッシュや社交の場としても重要な役割を果たしていたことがよくわかりました。特に温浴と冷浴を組み合わせた循環浴は、現代のサウナの温冷交代浴のルーツとして理解できる点が多く、新たな発見でもありました。

実際、古代ローマのテルマエ文化が、今日のサウナ文化に多大な影響を与えたこと、その背景には高度な建築技術や社会的な意識の高さがあったことを実感しました。

また、水風呂については水質の重要性や清潔への意識が古代から現代まで続いていることを再認識しました。この展覧会は古代ローマの文化や技術を深く理解するだけでなく、現代のサウナ文化をより楽しむための貴重なきっかけとなりました。

これからもサウナや水風呂の歴史を学び続け、その魅力を皆さんに伝えていきたいと思います。それでは、サウナと水風呂を通じて、古代ローマの人々が味わった心地よさをぜひ体感してみてくださいね!